楽しく呑んでいたお客さんが、
酔っ払った末に、話し始めたのは、
悲しいエピソードであった。
転居に伴い、
インターネットのプロバイダーを、
ンフ卜バソク社(仮名/以下S社)から、
他社に変更したそうだ。
S社の指示通り、
送料自分負担で機器を返還したのだが、
すぐに新しい別の機器が送られて来た、
と、云う。
問い合わせの電話を、
記載された電話番号に掛けるも、
どの音声案内の誘導に従っても、
「インターネットで手続き」
「店舗で手続き」等に辿り着き、
オペレーターへは繋がらない。
よく聞く話だ。
苦労の末、なんとかオペレーターへと繋がった。
結論は、S社による誤送であった。
オペレーターさんは云ったそうだ。
「大変お手数ではございますが、
着払いで結構ですので、
こちら迄ご返送頂けますでしょうか」
繋がる迄の度重なる彷徨と、
オペレーターコールに繋がってから、
実際にオペレーターさんが電話口に出る迄の待機、
繋がってからの先方との確認作業、
そんな無駄な徒労と時間の積み重ねが、
彼のハートにライトヒズファイア。
「大変 お手数 ですね」
確かに、そっちのミスなのだから、
オマエがココまで回収に来い、って話ではある。
その手数を彼が負担する覚えはない、
のは、確かにもっともな理屈ではある。
云われたオペレーターさんも、
すぐに宅配業者による集荷の手配、
と、すりゃいいモノを、
確認の為の保留、で、更に数分を掛け、
その後に、ようやく、
宅配業者の手配、となったらしい。
その保留の時間の経過で、
彼の怒りの炎は、更に、ランボー2。
声を荒らげはしなかった、
と、彼は云うが、はてさて?、
イヤ~んな感じ、の受け答えのまま、
幕引きをしたそうだ。
結局のトコロ、
下請けの末端のオペレーターのコが、
「めんどくせー客に当たった」
と、イヤな気分になっただけで、
彼自身も、
そんな対応をした自分に嫌気がさし、
後悔のイヤな気持ちだけが残っただけで、
そして、
問題のS社には一切何らダメージはない。
虚しい、空し過ぎる。
しかも、その日、
彼の新しい部屋に遊びに来ていた、
彼の恋人は、
そんな彼の電話での態度を見て、
それ以降、つれなくなったそうだ。
「もう、ダメだ、
ンフ卜バソクのせいだ!
イヌのせいだ!!
いや・・・オレのせいだ・・・
真起子~~・・・(嗚咽)」
悲しい酒、バーの夜は更ける。