あれは、そう、
昨年の4月のとある木曜日の、
23時を回るか回らないか位の時間だったか。
土砂降りの雨の中、
一人の女のコが、
僕の店を訪れた。
ずぶ濡れのまま、
カバンからカセットテープを取り出し、
「デモテープ、聴いて下さいっ」
と、一言、そのテープを押し付けるかの如く、
彼女は去って行った。
音源は、なかなか、かなり、興味深いモノではあったが、
連絡先等の情報は一切なかった。
「あります あります エステーエーピー
だってだって200回 ホントホント200回
出来たんだもん 作ったんだもん」
あれから一年、
彼女の消息はいまだ掴めぬままである。